バルサンを使用した後、死滅した害虫を掃除して一安心するのはまだ早すぎます。実は、ここからが本当の害虫対策の正念場と言っても過言ではありません。なぜなら、バルサンの薬剤は「今生きている虫」には強力に作用しますが、多くの害虫の「卵」には効果が及ばないことが多いからです。例えば、ゴキブリの卵は丈夫な殻に包まれており、薬剤が内部まで浸透しません。そのため、一度の駆除で成虫や幼虫を全滅させたとしても、生き残った卵が二週間から三週間後に孵化し、再び家の中で活動を始めてしまうのです。これを「バルサンの敗北」と勘違いして諦めてしまう人が多いのですが、これは害虫の生態上、避けられない現象です。そこで重要になるのが、二回目、三回目の「追いバルサン」です。一度目の使用から約二週間後、つまり卵が孵り、かつその新たな虫たちが再び卵を産む前のタイミングを狙って、もう一度同じ作業を行うことが完璧な駆除への鍵となります。この二回目の施工時にも、一回目と同様、あるいはそれ以上の注意を払う必要があります。一度目で手順に慣れてしまい、養生や換気を疎かにしてしまう「慣れ」が一番の敵です。火災報知器のカバー忘れや、ペットの避難の遅れなどは、こうした二回目の作業時にこそ起きやすいものです。また、一回目で生き残った強靭な個体がいないか、二回目の作業前に家具の裏などをチェックし、もし生き残りが確認された場合は、薬剤の個数を調整したり、設置場所を工夫したりする対策も必要でしょう。さらに、バルサンによる「攻め」の対策と並行して、害虫が侵入しにくい環境を作る「守り」の対策を強化してください。排水溝の隙間を埋める、網戸の破れを直す、不要な段ボールを処分するといった地道な作業が、バルサンの効果を永続的なものにしてくれます。害虫対策は、一度の爆発的な駆除で終わるものではなく、数週間にわたるサイクルとして捉えるべきものです。二度目の使用をスケジュールに組み込み、一回目と同じ緊張感を持って丁寧に実行すること。この根気強さこそが、害虫のいない真に平和な住まいを手に入れるための、最も確実で避けて通れない道なのです。
一度では終わらない害虫対策のサイクルと再施工時の重要事項