春の陽気に誘われて、ようやく冬物のコートを片付けようとクローゼットの奥を整理していたときのことでした。お気に入りだったウールのストールを持ち上げた瞬間、そこから数ミリの茶色い、毛むくじゃらの何かがポロリと床に落ちました。最初は何かのゴミかと思いましたが、目を凝らして見ると、それはゆっくりと体をくねらせて動く、生きている幼虫だったのです。背筋が凍るような思いでストールを確認すると、そこには虫食いの穴が無数に開いていました。後で調べて分かったことですが、それはヒメカツオブシムシという害虫の幼虫でした。私の格闘はそこから始まりました。まず驚いたのは、その幼虫がストールだけでなく、近くにあったカシミヤのセーターや、さらにはシルクのブラウスにまで移動して、まるでバイキングでも楽しむかのように食い荒らしていたことです。彼らは非常に光を嫌うため、普段使いの服よりも、奥の方に大切にしまっておいた高価な服ほど被害が集中していました。私はパニックになりながら、まずは全ての衣類をクローゼットから引っ張り出し、一枚一枚を光に透かして点検しました。すると、幼虫本体だけでなく、彼らが脱皮した後の抜け殻が、棚の隅や服の縫い目から次々と見つかりました。この抜け殻自体もアレルギーの原因になると聞き、私は掃除機にノズルをつけて、クローゼットの四隅や、ハンガーパイプの付け根まで徹底的に吸い込みました。ヒメカツオブシムシの幼虫は、ほんのわずかな隙間さえあればそこに潜り込み、長期間生存し続ける執念深さを持っています。私はさらに、被害に遭った服をクリーニングに出すだけでなく、まだ無事だった服も全て洗濯し、天日干しをしました。彼らは熱に弱いと聞いたので、アイロンがけも入念に行いました。作業中、ふと部屋の隅にあるカーペットの端をめくってみると、そこにも幼虫が数匹潜んでいるのを見つけ、絶望的な気分になりました。彼らは衣類だけでなく、家のあらゆる場所にある有機物を餌にしていたのです。それ以来、私は「防虫剤さえ置いておけば大丈夫」という考えを改めました。防虫剤はあくまで補助であり、何よりも重要なのは、彼らの餌となるホコリや髪の毛を徹底的に排除する日々の掃除と、定期的にクローゼットの空気を入れ替える風通しの良さであることを身をもって学びました。今でも、新しい服を買うたびにあの茶色い毛虫の姿を思い出し、まずはクローゼットが彼らにとって住みにくい場所になっているかを確認することが習慣になっています。あの小さな虫との格闘は、私の暮らしに対する意識を根本から変える、非常に苦く、そして教訓に満ちた出来事でした。