私がガーデニングの世界に足を踏み入れたのは、一鉢の美しいバラとの出会いがきっかけでした。しかし、花の女王とも称されるバラは、その美しさゆえに、実に多くの害虫たちをも惹きつける、非常に手のかかる植物であることを、私はすぐに思い知らされることになります。春、柔らかな新芽が伸び始めると、どこからともなく「アブラムシ」の大群が現れ、芽の先端を黒く埋め尽くしました。最初は牛乳スプレーで対抗しましたが、その繁殖力は私の想像を遥かに超えており、すぐに薬剤に頼らざるを得なくなりました。ようやくアブラムシを撃退できたと安堵したのも束の間、今度は葉の裏に「ハダニ」が発生しました。肉眼ではほとんど見えないほどの小さなダニですが、葉の養分を吸い、カスリ状の白い斑点を残して、バラの元気をみるみる奪っていきます。ハダニは乾燥を好むため、毎日葉の裏に水をかける「葉水」で対抗しましたが、一度発生すると根絶は難しく、これも専用の殺ダニ剤を使うことになりました。初夏になると、新たな刺客が現れました。葉を巧みに丸めて中に潜み、内部から食害する「ハマキムシ」です。見つけ次第、丸まった葉ごと指で潰すという地道な作業を繰り返しました。そして、何よりも私を悩ませたのが、バラの蕾や花びらを狙って穴を開ける「チュウレンジハバチ」の幼虫と、コガネムシの幼虫である「ネキリムシ」でした。これらは株の根元に潜んでいるため、発見が難しく、気づいた時には大切な蕾が台無しにされていることも一度や二度ではありませんでした。毎週末、私は虫眼鏡を片手に、バラの葉一枚一枚を裏返し、株元を注意深く観察する日々。それは、もはや趣味というより、戦いでした。しかし、この長い戦いを通して、私はバラの小さな変化に気づけるようになり、それぞれの害虫の特性に合わせた最適な対処法を学んでいきました。今では、農薬だけに頼るのではなく、益虫の力を借りたり、予防のための環境を整えたりと、複合的なアペローチでバラを守っています。害虫との戦いは、私に植物を育てることの難しさと、それ以上の深い喜びを教えてくれた、かけがえのない経験なのです。
バラを愛する私の長い害虫との戦いの記録