ガーデニングの世界で、最もポピュラーで、そして最も多くの園芸家を悩ませる害虫、それがアブラムシです。体長わずか2~4ミリ程度のこの小さな虫は、気づいた時には新芽や蕾、若い葉の裏などにびっしりと群生し、植物の養分を吸い尽くしてしまいます。彼らは驚異的な繁殖力を持ち、春から秋にかけて、条件が良ければメスだけで単為生殖を繰り返し、爆発的にその数を増やしていきます。アブラムシの被害は、単に養分を吸われるだけではありません。彼らの排泄物である甘い「甘露」は、葉の表面に「すす病」という黒いカビを発生させる原因となります。すす病は光合成を妨げ、植物の生育をさらに悪化させます。また、アブラムシは様々な植物のウイルス病を媒介する運び屋でもあり、その存在は植物にとってまさに百害あって一利なしです。この小さな大敵を駆除するには、早期発見と迅速な対応が鍵となります。まず、発生がごく初期段階で、数が少ない場合は、物理的な除去が最も手軽で安全です。指で直接潰すか、粘着テープや古い歯ブラシなどを使って、植物を傷つけないように優しくこすり落としましょう。範囲が少し広い場合は、牛乳を水で薄めたものをスプレーするという方法も有効です。牛乳が乾く際に膜を作り、アブラムシを窒息させる効果があります。ただし、散布後は放置すると腐敗やカビの原因になるため、必ず水で洗い流してください。もし、これらの方法では追いつかないほど大量に発生してしまった場合は、薬剤の使用を検討します。園芸店では、アブラムシに効果のある様々な殺虫剤が販売されています。即効性のあるスプレータイプの他に、土に混ぜることで根から成分を吸収させ、長期間効果が持続する粒剤タイプもあります。植物の種類や発生状況に合わせて、適切なものを選びましょう。アブラムシは、風に乗ってどこからともなく飛来します。一度駆除しても油断せず、日々の観察を怠らないこと。それが、このしつこい害虫との戦いに勝利するための、唯一の道なのです。
小さな大敵アブラムシの完全駆除マニュアル