家の隅やキッチンの棚の奥で、黒くて小さな米粒のようなものを見つけた時、多くの人は単なる不快感で済ませてしまうかもしれません。しかし、それがねずみの糞であった場合、その背後には深刻な健康被害のリスクが潜んでいることを知る必要があります。ねずみの糞は、決してただの汚物ではありません。様々な病原菌やウイルスを内包し、私たちの生活空間にばらまく危険な感染源なのです。ねずみが媒介する病気は数多く存在しますが、その感染経路は主に二つに大別されます。一つは、糞や尿に汚染された食品や水を、知らずに口にしてしまうことによる経口感染です。代表的なものに、激しい腹痛や下痢を引き起こす「サルモネラ症」があります。キッチンや食品庫で糞を見つけた場合は、特にこのリスクを警戒しなければなりません。もう一つは、さらに注意が必要な感染経路で、乾燥した糞や尿が砕けて微細な粒子となり、空気中に浮遊したものを吸い込んでしまうことによる呼吸器からの感染です。この経路で感染する病気には、風邪のような症状から急激に重篤な呼吸不全に陥る「ハンタウイルス肺症候群」などがあり、命に関わるケースも報告されています。また、皮膚の傷口から病原体が侵入する「レプトスピラ症」のように、糞だけでなく尿も危険な感染源となります。これらの病原体は、ねずみ自身には影響を与えずに共存しているため、見た目が健康そうなねずみでも危険な病原体を保有している可能性があるのです。たかが糞と侮ることは、家族全員の健康を危険に晒す行為に他なりません。家にねずみの糞を見つけるということは、私たちの生活圏内に病原体の運び屋が侵入しているという明確なサインです。その一粒が持つ意味を正しく理解し、迅速かつ適切な対応を取ることが、深刻な病気から身を守るための第一歩となるのです。
見つけたら要注意!ねずみの糞が引き起こす病気のリスク