美しい花を育てたいけれど、化学合成された農薬を使うことには抵抗がある。小さな子供やペットが庭で遊ぶから、できるだけ安全な方法で虫対策をしたい。そう考える自然派のガーデナーは少なくありません。幸いなことに、私たちの身近にある、安全な素材を活用した、昔ながらの知恵とも言える害虫対策が数多く存在します。これらの方法は、強力な農薬のように一撃で虫を全滅させることはできませんが、継続的に行うことで、害虫の発生を抑制し、植物が本来持つ抵抗力を引き出す助けとなります。まず、アブラムシ対策として有名なのが「牛乳スプレー」です。牛乳を水で同量から数倍に薄めてスプレーし、乾かすことで、牛乳の膜がアブラムシの気門を塞ぎ、窒息させる効果があります。ただし、散布後は放置すると腐敗して悪臭やカビの原因となるため、必ず水で洗い流すことが重要です。次に、幅広い虫に対して忌避効果(虫を遠ざける効果)が期待できるのが「木酢液」や「竹酢液」です。木炭や竹炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りを虫が嫌います。水で数百倍に薄めて、定期的に葉の表面や株元に散布することで、害虫が寄り付きにくい環境を作ります。また、うどんこ病などの病気予防にも効果があると言われています。さらに、唐辛子やニンニクを使った手作りスプレーも強力な武器になります。唐辛子を焼酎に漬け込んだり、ニンニクをすりおろして水と混ぜたりした抽出液は、多くの害虫が嫌う刺激成分を含んでいます。これらを水で薄めて散布することで、アブラムシやイモムシなどを遠ざける効果が期待できます。これらの自然派の対策は、効果が穏やかである分、雨で流れ落ちやすいため、こまめに散布する必要があります。しかし、自然の力を借りて、ゆっくりと、しかし着実に庭の環境を整えていくプロセスは、ガーデニングのもう一つの楽しみとも言えるでしょう。
農薬に頼らない優しい花の虫除け術