「バルサン」と一括りにされがちな燻煙・燻蒸式殺虫剤ですが、実は「煙タイプ」「水タイプ」「霧タイプ」といった複数の種類があり、それぞれ特徴や有効成分が異なります。そして、どのタイプであっても使用中に人が家にいてはいけないという原則は変わりません。その理由を、製品の仕組みから理解しておきましょう。最も古くからある「煙タイプ」は、殺虫成分を熱によって煙状の微粒子にして拡散させます。煙なので浸透力が非常に高く、隠れた害虫にも届きやすいというメリットがありますが、火を使うため火災報知器への対策が必須です。一方、「水タイプ」は、水と薬剤の化学反応によって蒸気を発生させ、殺虫成分を拡散させます。火を使わないため煙タイプより安全性が高く、マンションなどの集合住宅でも使いやすいのが特徴です。そして「霧タイプ」は、エアゾールガスの圧力で薬剤を霧状に噴射します。ボタンを押すだけと手軽で、煙や熱が出ないため火災報知器への反応も少ないとされています。これらの製品に共通して使われることが多いのが「ピレスロイド系」の殺虫成分です。これは、害虫の神経を麻痺させる効果がありますが、哺乳類や鳥類に対しては比較的毒性が低いとされています。しかし、これはあくまで「比較的」の話であり、高濃度で吸い込めば人体にも喉の痛みや咳、頭痛などの症状を引き起こす可能性があります。特に魚類や両生類、昆虫には非常に強い毒性を示すため、ペットを飼っている家庭では細心の注意が必要です。どのタイプを選ぶにせよ、その目的は「殺虫成分の粒子を部屋中に充満させること」です。その空間に人間が留まることがいかに危険かは、想像に難くないでしょう。製品の特性を正しく理解し、安全な使用方法を遵守することが、効果的な害虫駆除と自身の健康を守るための基本なのです。
バルサンの種類別有効成分と安全確保の知識