自力での蜂駆除において、唯一にして最大の武器となるのが、市販の蜂用殺虫スプレーです。このスプレーは非常に強力で効果的ですが、その性能を最大限に引き出し、かつ安全に使用するためには、正しい使い方と注意点を熟知しておく必要があります。まず、スプレー選びが重要です。必ず「スズメバチ用」「蜂用」と明記された、噴射力の強いジェットタイプのものを選びましょう。ゴキブリ用などの殺虫剤では、効果が薄いばかりか、蜂を無駄に刺激するだけです。噴射距離が長い製品(最低でも3メートル、できれば5メートル以上)を選ぶことで、巣から安全な距離を保って作業ができます。予備も含めて、二本以上用意しておくと安心です。次に、使用時の手順です。万全の防護服を着用し、風上に立つことを徹底します。風下から噴射すると、薬剤が自分に降りかかってきます。そして、巣から製品の有効射程距離まで近づき、狙いを定めます。ここからが最も重要なポイントです。ためらったり、少しだけ噴射して様子を見たりしてはいけません。それは蜂に反撃の機会を与える最悪の行動です。一度噴射を始めたら、巣全体をめがけて、最低でも20〜30秒間、連続でスプレーし続けます。缶一本を使い切るくらいの覚悟で、巣の表面だけでなく、出入り口の穴にも薬剤が流れ込むように、徹底的に浴びせかけます。噴射後は、すぐにその場から離れ、静かに家の中などの安全な場所に避難します。巣から蜂が飛び出してきても、決してパニックにならず、落ち着いて退避してください。薬剤の効果が現れるまでには少し時間がかかります。巣の様子が気になっても、その日のうちは決して近づいてはいけません。殺虫スプレーは強力な武器ですが、それを扱うあなたの冷静な判断と、ためらいのない行動があって初めて、その真価を発揮するのです。